母を想えば
「「・・・・・・・・。」」
「あの、下にいますので終わりましたら鍵だけお願いします。」
「大家さん。」
「あ、はい。」
「ここって家賃いくらですか?」
「2万8千円です。」
扉を開けてすぐにある流し台。
申し訳なさ程度に設置されているトイレ。
直立不動にならないと浴びれなさそうなシャワー。
ぎゅっと体育座りしないと座れなさそうな浴槽。
それらが押し込まれて空いた、
僅かなスペースしかないワンルーム。
冷蔵庫と布団とタンスしかない、
“殺風景”な部屋が目の前に広がる。
「エアコンが付いてるだけはマシだな。」
「テレビも置いてないとは・・。
これじゃまるで、
“ただ寝るだけ”の場所です。」
布団の傍に置いてあった、
100均で売ってそうなスタンド型の鏡。
きっとこの僅かな反射を頼りにメイクをして、毎夜あの仕事場へと向かっていたのか・・。