母を想えば
「いいですか皆さん。
傘をさしてたって事は、
その後ろ姿を見た時、
今の小西みたいに“背中がまるまる傘で覆われていて、全く見えない”って事になります。
現場の遺留品からも分かったように、杉内さんって肩掛け鞄を所持してたんですよね?
だったらもしかしたらこの傘の向こう、
背中じゃなくて鞄がワンクッション挟んでたかもしれない。」
「「「「「・・・・・・。」」」」」
「“スカすかもしれない”
そんな見えない後ろ姿に向かって、いきなり包丁突き立てるリスクを冒しますかね?」
「・・・つまり・・・
どういう事だ真田!?」
「【呼び止めた】んじゃないですか?」
「「「「・・・・?」」」」
「小西君よ、こっち向いてちょうだい。」
「はい。」
「・・・・・まずはこうして、
正面に相対したんじゃないですか?」
「と言うことは、
“腹の刺し傷”が一発目か?」
「そっちの方が俺の中では辻褄が合います。
こうやって確実に相手の姿を捉えた上で、事が始まったんじゃないですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
「・・・きょ、今日の所は引き上げだ!
シミュレーション練り直して出直すぞ!」
県警の人達があっという間に撤収していく。
どうやら真田さんの意見を考慮してくれるらしい。