母を想えば


「いいですか皆さん。

傘をさしてたって事は、
その後ろ姿を見た時、

今の小西みたいに“背中がまるまる傘で覆われていて、全く見えない”って事になります。

現場の遺留品からも分かったように、杉内さんって肩掛け鞄を所持してたんですよね?

だったらもしかしたらこの傘の向こう、

背中じゃなくて鞄がワンクッション挟んでたかもしれない。」


「「「「「・・・・・・。」」」」」


「“スカすかもしれない”

そんな見えない後ろ姿に向かって、いきなり包丁突き立てるリスクを冒しますかね?」


「・・・つまり・・・
どういう事だ真田!?」


「【呼び止めた】んじゃないですか?」


「「「「・・・・?」」」」




「小西君よ、こっち向いてちょうだい。」


「はい。」


「・・・・・まずはこうして、
正面に相対したんじゃないですか?」


「と言うことは、
“腹の刺し傷”が一発目か?」


「そっちの方が俺の中では辻褄が合います。

こうやって確実に相手の姿を捉えた上で、事が始まったんじゃないですか?」


「・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・。」


「・・・きょ、今日の所は引き上げだ!
シミュレーション練り直して出直すぞ!」




県警の人達があっという間に撤収していく。

どうやら真田さんの意見を考慮してくれるらしい。



< 141 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop