母を想えば


「この時点で勝負あっただろうな。」


「・・・・・?」


「いいよ。次はお腹に包丁で。」


「はい・・・でもこれだと・・?」


「小西君よ。あながちサルが言ってる事も間違ってないかもしれない。」


「・・・・・・・・・・。」


「満島さんが格闘技経験のある女性とか、

早苗みたいなゴリラ女だったらまだ分からないけど、

普通に考えて、
男が女性を襲った場合・・

女性に反撃するチャンスなんてほとんど無いよ。」


「・・・確かに・・・。」


「どうだ?いきなり顔面を殴られて腹を刺された俺に、

お前から包丁を奪って、その腹と背中を刺し返せる力が残ってると思うか?」


「無い・・・はずです。

でもこれだと、
実際の2人の外傷が再現できません。」



「俺はまだまだ結論を出すつもりは無いけど、ウヤムヤにしておくのが気持ち悪かったら、

ほぼさっきの猿芝居のイメージ通りだと思っていいかもな。

この事件は恐らく、
【満島さんが杉内検事長を襲った】

彼女から先に仕掛けて、仕留めきれずに反撃を食らったって考えた方が、

外傷との辻褄も合うし、
可能性としては高い。」


「そうなると“動機”ですか・・。」


「それと、お前もサルに言ってた“凶器を用意した”という殺意の証明。

まっ、取っかかりが少しずつ見え始めたし、

サルがさっさと幕引き図ろうとする前に辿り着けばいいんじゃない?」



杉内検事長の正当防衛か・・。

これだと・・良くも悪くも県警が望む方向に進んでる。


猿渡警部のあの様子からすると、

俺達もスピードを上げないといけないかもしれないな・・。






第5話 完











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