母を想えば
――――――
「中止か・・。」
「うん・・。あっという間に今日で3人目の被害者の子が出たから・・
部活動は全部中止にして、陽が明るいうちに一斉下校させるってさ。」
「・・・うん、そうだな。
そのほうが安心だよな。
ハルカは大丈夫か・・?」
「違う学校とはいえ、3人目で同じセイズ市の子も被害に遭ったから・・
本人もかなり気にしてる。」
「そうだよな・・・。」
「それでPTA会長さんから連絡があってね、
保護者会で当番を決めて、毎日下校時に2人一組になって見回りしようって。」
「こういう時こそ大人がちゃんと子供達を守・・って!トモコも?」
「当たり前でしょ。」
「いやちょっと待って。
俺がその当番やるよ・・!」
「大丈夫。2人で行動するし、防犯ブザーとか催涙スプレー用意してくれるらしいから。」
「心配だなぁ・・・・。」
「家の事は私がしっかりやるから。ハヤトはしっかり稼いできてちょうだいっ。」
いつの間にか無くなったというか、する必要が無くなった真夜中の夫婦会議。
突然訪れた不穏。
穏やかが、穏やかじゃ無くなった日常。
私達の身近に、確かに連続殺人犯がいる。
怖さより、ニュースを見る度にハルカの事を守らなければいけない責任感が上回った。
私達の身近で、同じぐらいの歳の子供を失ってしまった親がいる。
怖さより、ニュースを見る度に・・
その事で胸が苦しくなった。
<臨時ニュースです。この時間は番組の内容を変更してお送りします。
先月から6件にも及び発生した、
女子中高生連続殺人事件について、
え~警察が先ほど容疑者の身柄を確保しました。
え~犯人と思われる容疑者の男を逮捕しました。
男の名前は【才谷ヒロシ】33歳。
え~静岡県警前から鈴木キャスターと中継が繋がっています。鈴木さ~ん?>
<はい。私は今、才谷容疑者が連行された静岡県警に・・・>