母を想えば
「お母様と会うのはいつ振りですか?」
「14の時に私の前から消えたので20年振りです。・・・あのすみません。」
「あ、はい。」
「午後には静岡に戻りたいんですけど、
すぐ終わりますか?」
「・・・・はい。
“満島トモコさん本人”かどうかを確認してもらいたいだけですので。」
今まで遺体と遺族の対面には何度も立ち会ってきたけど、
かったるそうに腕時計を見ながら“すぐ終わるか?”と聞かれたのは初めてだ。
露骨に態度には出していないけど、
どこかハルカさんからは“面倒くさい感”がプンプンに漂っている。
「どうぞこちらです。」
安置所の扉を開けて招き入れると、
俺と真田さんはそのまま隅に立つ。
「・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・。」
視線の先で横になるトモコさんの遺体。
立ち尽くす事もなく、戸惑う事もなく、ハルカさんが迷わずそこに一歩ずつ近寄っていく。