母を想えば


声のボリュームと比例して、
その瞳がどんどん潤んでいく。


この安置所では滅多に流れる事のない、

無機質に横たわる被害者に対しての“怒り”の涙だった。



現在は杉内検事長と不倫してて、20年前も旦那とは別の男と付き合ってたのか・・。


綺麗な見た目だから分からなくもないけど、トモコさんは恋多き女性だったのかもしれない。


「もういいですか帰っても?」


「あ、はい。
ご協力ありがとうございました。」


ここまで一言も発しず、
ずっと無言の真田さんに視線を送るけど、

特に何も言ってこないので部屋を出・・


「あ、ハルカさん。1ついいですか?」

と思ったらようやく声を発してきた。



「なんですか?」


「申し遅れましたが、小西と同じくムコウジマ署の真田です。」


「・・・・・・・。」


「トモコさんのご遺体・・
いかがされますか?

既に検死は終わってるので遺族の方に返すこともできるんですけど、引き取りますか?」



「・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・。」



「・・・・・。」


「父方の祖母や親戚の人達に相談してまた連絡します。」


「そうですか。
じゃあひとまずこのまま置いておきますね。

もし無縁仏にするんだったら、私が責任持って良いお寺探しますのでご安心ください。」


「こんな女にそんな気遣い要らないですよ。」








< 160 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop