母を想えば
“ガチャリ”
「ただいま・・・。」
「スッ・・おかえりなさい。遅かったね。」
「トモコ・・泣いてるのか・・?」
「これ・・あの事件の被害者の子のお葬式が今日あったんだってさ・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・?」
汗臭いから早くお風呂行ってよ・・と言いたくなったけど、作業着のまま、
ハヤトも私と一緒にブラウン管の前に座る。
<この春、夫婦二人の念願だった美容院をオープンした吉田夫婦。
その店名は・・“MAHO”だった。>
「この子も・・スッ・・ハルカと同じ美容師を目指してたんだってさ・・。
お父さんとお母さんと一緒に働くのが夢だったんだってさ・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
<警察の取り調べに対し、
犯行を全面的に認めている才谷容疑者。
捜査関係者への取材によると、
才谷容疑者の供述には一貫性があり、
責任能力があると判断。
精神鑑定は行わず、引き続き慎重に立件へ向けて進めている。>
「こんな事絶対おかしいよ・・。
絶対死刑だよこんな男・・。」
「・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・って!あ、ごめん。
すぐにご飯準備するね。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・?ハヤトどうしたの?
早くお風呂入ってきなよ。」
「・・・・・・・・・・・。」
「ねぇハヤトったら。」
「・・・・あ・・うん。
ごめん俺も貰い泣きしそうになってた。」