母を想えば
<男の名前は【灰原ジロウ】
間もなく静岡県警からの記者発表があるとの事で、
会見場から鈴木キャスターと中継が繋がっています。
鈴木さ~ん?>
<・・はい。え~私は今、静岡県警内の会議フロアへと来ております。
ご覧のように大勢の報道陣が押し寄せている状況です。
え~会見に先立ち、県警から我々報道スタッフの元へ発表された情報によりますと、
本日逮捕した灰原容疑者は、
先に逮捕・起訴した才谷被告の共犯で、
灰原容疑者のほうが一連の犯行を主導した、いわゆる“主犯”と見ているようです。>
「怖っ・・。
犯人2人いたんだね・・・。」
「・・・・嘘でしょ・・・?」
「え・・・お母さんどうしたの?」
ブラウン管の端に映る顔写真。
手から箸が滑り落ちて、口に入れた煮物を飲み込むことさえ出来ずに固まる。
「あれ・・・お父さんと同じ会社で働いてる人・・・。」
「え!?」
「ハルカは寝ぼけてたから覚えてないかもしれないけど・・
だいぶ前にお父さんが飲み過ぎて帰ってきた時・・家まで運んでくれた人・・・。」
「ウチに来たことあるの!?」
「・・・・・・・・・。」
“お嬢様ですか?”
途端に、背筋へ一気に悪寒と、
全身に鳥肌が立った。
パジャマ姿のハルカを見たあの時の視線が一気に蘇る。
あれは・・一体何を想って見ていたの・・?