母を想えば
「真田さん。
“今”の情報はもう必要無いと思います。
蝶舞蘭のホステスと名古屋高等検察 検事長。
“今”の肩書きとそれにまつわる情報に惑わされても、きっと時間の無駄です。
“過去”・・もしそこに、
満島さんと杉内検事長を結びつける“因縁”めいたものがあるとすれば・・・。」
「トモコさんがハルカちゃんを捨てて、
出て行ったのって20年前か?」
「です。」
「じゃあ始まりはそこからだったのかもしれないな。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
きょとんとした顔で俺達の顔を見渡す猿渡警部は置いておいて、
真田さんと目が合ったままほぼ同時に・・
「「・・【旦那の自殺】・・・。」」
同音の口が揃ったところで、
遅れて猿渡警部も追いついてきた。
「ちょっと待てよ・・。
20年前と言ったら、
杉内殿があの最凶最悪のサイコパス・・
灰原を捕まえた時期じゃないか!?」
「よし、そうと決まったら行くか小西。」
「はい・・!」
「猿渡さん。明日から俺達を静岡へ派遣させてください。」
「・・・・・・・・。」
「あなただったら静岡県警にも顔が効くでしょ?
所轄レベルの刑事が行っても相手にされないだろうから、
あなたから口聞いといてほしいです。」
「そ、そこまで調べる必要があるのか・・?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「もう2人とも死んでるんだぞ・・?
満島が杉内殿を襲ったのはほぼ間違いない所まで分かったんだぞ・・?
静岡へ行って、
そこにどんな真実が待っていようが、
今回の事件がひっくり返るって言うのか!?」
「そんな事・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「今この段階ではさっぱり分かりませんよ。」
手に持ったコップごと再び猿渡警部がズッコけて、焼酎が思いっきり足にかかった。
第8話 完