母を想えば
「それでハヤトを・・?」
「何人か優秀な従業員を紹介したそうで、
もちろんハヤトもその一人です。」
「・・・・・・・・・・・。」
「・・・すみません・・。
だから何だ?って話ですけど・・。」
「あの・・その保護観察官の名前は分かりますか・・?」
「いや・・“これはあくまで秘匿の監察だ”って、名前も教えてくれなかったみたいです。」
一変したあの日から、
時計の針は止まったままだった。
私達の針は止まったまま、
現実の針が進んでいく。
お通夜とお葬式を手伝ってくれた大崎社長と従業員の皆さん。
何も出来ない私の代わりに・・。
市外、県外に散り散りになっていたのに集まってくれて、
その棺に手を合わせて涙を流してくれた同級生のみんな。
何も言葉を掛けられない私の代わりに・・。
いつ目を覚ましてくれるのかとずっと見つめていても、霊柩車に乗っても起きてくれない。
なんで?って聞いても何も答えてくれない。
針が止まったままなのに勝手に針は進んで、
最後までドッキリの札を掲げることなく、
灰になって、骨だけになって、
箸渡しでちっちゃな箱に収って・・。