母を想えば


「現場には争った痕もなく、

遺体にも転落して出来た傷しかありませんでしたので、間違いなく自殺です。」


「この右側側頭部以外には目立った外傷は無かったんですか?」


「まぁ当然、落下の衝撃で全身が強く打たれていましたが特筆するのはこれぐらいでした。」


「無いなら無いで、
写真撮らなかったんですか?」


「フィルムの無駄ですので。」


「でもこれじゃ【左側側頭部】に落下とは関係ない傷があったんじゃないか?

って勘ぐられますよ?」


「・・・・・なんですか?
落下に関係ない傷って?」


「例え話ですよ。ハヤトさんは誰かに殴られて落とされた・・・なんつって。」


「あはは。真田刑事は面白いお方ですね。」



良くも悪くも表情を変えない・・。
良くも悪くも普通に淡々と受け答えてくる。


真田さんと話す板尾警部の様子をチラリと伺うけど、

何より・・20年も昔に起きた事案のはずなのに、

間髪入れず矢継ぎ早に答えてくるのが不気味だった。


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