母を想えば
「板尾警部。自分からも質問いいですか?」
「はい小西刑事。」
「どうして県警が担当したんですか?
普通、中央署の管轄になるのでは・・?」
「簡単な話です。
第一発見者がたまたま県警の人間だったので、その流れで我々が指揮を執りました。」
「あ・・そうだったんですか。」
「というより、私が第一発見者でしたから。」
「え!?」
「他の事件の捜査の帰り道、
たまたま倒れていた満島氏を発見して、
すぐに救急車を手配した後、
仲間の皆に号令をかけました。」
「・・・・・・その時、現場付近に不審人物はいなかったんですか?」
「不審人物?いえ、もちろん誰もいませんでしたよ。」
「あ、そうだ板倉さん。」
「板尾です。」
淡々と何もない“無”の空気が流れる中、
相変わらず名前を覚えるのが苦手な真田さんに一瞬ヒヤッとする・・。
「もう一度聞きますけど、
現場には何も無かったんですよね?」
「“何も”というのはどういう意味ですか?」
「言葉の通りです。」
「・・・はい。何もありませんでした。」
「ありがとうございました。
大変参考になりました。」
真田さんから視線を受け取ったので、
ここまでにして退散する。