母を想えば
第1章
第1章
「お、ヨシヒト~!」
“静岡県 専浄寺”
400年以上の歴史を誇る、
静岡県内でも有数なお寺の一つ。
そして・・僕が生まれた家・・。
「兄ちゃん、元気そうだね。」
「そういうお前も、
また一段とオッサンになったなぁ。」
その頭を光らせるスキンヘッドも、
その身を纏う禅衣も、
会う度にしっかりと様になっている。
「ダハハ、しっかし相変わらずスーツ似合ってないぞ。」
・・・それに対して、
どうやら僕はまだまだらしい。
竹ぼうきで境内の落ち葉を掃除していた兄と軽く近況報告をしたところで、
本堂と隣接する実家へと向かった。
“大丈夫。お家は俺が継ぐから。
ヨシヒトは余計な心配しないで良し”
“父さん・・。
僕は警察官になりたいです”
高校を卒業するまで過ごしたこの家、
このお寺。
物心ついた時から、
父には厳しく育てられた。
専浄寺を継ぐ次の世代として、
兄と共に修練を積み、
“僧侶”として、足下に敷かれたレールを歩いていく・・・はずだった。