母を想えば
――――――
「杉内様~!いらっしゃいませ~。
・・あら?今日はお一人なんですか?」
『突然来てすみません。
トモちゃんは出勤してますか?』
「はい~。じゃあ今日はあちらのお席へどうぞ~。すぐに呼んできますね。」
『・・・・・・・・・。』
「お待たせしました。」
『俺の連絡先はどうやって知ったんだ?』
「先日ご一緒されていた東京の検事さんから聞きました。」
『・・チッあのジジイ調子に乗りやがって。
まぁ良い。おかげで助かった。』
「はい。」
『それで?週刊誌が俺の事を嗅ぎ回ってるのか?』
「はい。記者を名乗るお方が最近よくこのお店に来て、
杉内様の事を私に聞いてくるんです・・。」
『その記者の名前は分かるか?
どこの出版社か?』
「“文春”とだけ。名刺は貰いましたが恐らく偽名だと思います。
なんだか信用できなさそうな人だったので、
杉内様のお耳に入れておこうと思って・・。」
『ありがとう。それでその記者は一体何を嗅ぎ回ってる?』
「よく分かりませんが、
“20年前の事”
“灰原ジロウについて”
って・・。」
『・・・・・・・・・・・・・・。』
「誰ですか・・?灰原って・・・?」
『君は知らなくてもいい話だよ。
・・・トモちゃんお願いがある。
もう少しだけその記者と接触を続けてくれ。
そいつは俺から何を聞き出そうとしているのか、そいつはどこまで情報を掴んでいるのか、
それとなく探って教えて欲しい。』
「はい・・分かりました。」
『・・フッ・・俺は運が良い・・。
君のような賢いホステスがいてくれて助かるよ。』
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」