母を想えば


『しかしその記者も、勝手な憶測を述べているだけで証拠は掴んでいない様子だな。』


「そのような印象でした。」


『そりゃそうだ。
そんな事実は無いんだから。

まだ嗅ぎ回るつもりなら、

“杉内の口から静岡県警の板尾の名前が出た”と餌を与えておいてくれ。

板尾はあの時の事件を一緒に捜査した、
あの当時最も俺に近かった県警の人間。

そいつに取材すれば、そんな証拠は微塵も無いことが分かるだろうよ。』




「でも・・・・・・。」


『ん?』


「仮に・・もし事実であったとしても・・杉内さんは悪くないと思います・・。」


『・・・・・・・・。』


「凶悪犯を倒す為の・・
正義の化身ですものね・・?」


『・・フッ・・・フハハハ!
やはり君は賢い女性のようだ。』


「・・・・・・・・・・・・。」


『そうだな。

仮にそれが事実だったとしても、
それの何が悪い・・?

灰原があの事件に関わっていたのは明白だった。あとは証拠さえ挙げればこちらの勝ちだった。

俺は正当な捜査、
正当な証拠を見つけ出したが、

もし偽造したとしても、それが何だ?』


「はい。その通りですね。」

< 212 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop