母を想えば
“ハルカに対しては「愛してる」だけど、
やっぱりトモコに対しては「好きだ」だな”
「杉内さん!!」
『・・・・・・・?』
容赦なく傘へと打ちつけられる土砂降りの雨粒。
じっと待ち、じっと打たれ続けた暗闇。
ようやく現れたその後ろ姿に向かって声を挙げると、
驚いた顔を見せながら、
ゆっくりとこちらへ振り返った。
『トモちゃん・・?
どうしたこんな所で?』
「週刊誌の記者の名前が分かりました。」
『おぉそうか!それで名前は?
大丈夫だ。君には迷惑がかからないよう、
秘密裏に潰してやるから安心しなさい。』
「旧姓、原口トモコ。」
『・・・・は・・・・?』
「名前は・・満島トモコ・・・!」
『!!?』
「・・・・・・・!!!」
計画通りの“混乱”が起きた。
予想通りの“隙”が生まれた。
頭の良い検事だから、たった数秒の間に全てを理解できるのかもしれない。
記者の名前を聞いて、私の本名を聞いて、
今・・私がこの場に居る意味を・・・。
「!!!」
『・・・・ガッ・・・・。』
でもその数秒で十分だった。
傘を放り投げて、
包丁を取り出した鞄も放り投げて、
全ての憎しみを込めて突進する時間。
叫ぶ間もなく、突き立てた刃がそのお腹へと突き刺さる。