母を想えば
ようやく合ってくる焦点。
ぼやけた視界が戻る頃には・・
“殴られた”と頭で認識できた頃には・・
その汚い左手が私の胸ぐらを掴んで、
その汚い右手を雨と共に打ちつけてきた。
「クッ・・ッ・・・!!」
『旦那の恨みか!?
そんなにも俺が許せないか!?
だったらお前こそが人類史上希に見るクズだな!!?』
「・・・・・・・・!」
『灰原が何をしたのか分かってるのか!?
あいつは未成年時に8人の小学生を殺害し、
“少年X”として祭り上げられた!
お前にあの子供達の親の気持ちが分かるか!?
少年法さえ無ければあの時点で奴を葬れた!!』
「・・・・・・!」
『再び世に放った結果、
おかげで次は6人だ!!
何の罪も無い中高生6人がまた殺された!
正義が悪に負けていいのかお前は!?
あの凶悪をこの世から葬る為には、
俺にはどうしても証拠が必要だった!!』
「・・・・・!」
『あのクソ馬鹿野郎が・・!
こっちが苦労して細心を払って、
やっとの思いで死刑を勝ち取ったのに、
“やっぱり嘘はつきたくない”だと!?
再審になったら確実に奴は無罪放免になるんだぞ!!?』
「・・・・・・・・・。」
『灰原がまた世に放たれたら、
次は何人の命が犠牲になると思ってる!?
あの馬鹿野郎の口を封じたおかげで、生まれる必要の無い犠牲を俺は守ったんだぞ!?
99人の命を守る為に、
1人の命を奪って何が悪い!?
絶対的な悪に勝つ為に、
絶対的な正義を示して何が悪い!!?』