母を想えば
「ハルカちゃん。」
その表情が曇り、
だんだんと目線は下がり、
俯き加減になったその顔に向けて、再度バトンタッチした真田さんが優しく声を掛ける。
「もう・・“あの女”って呼び方はやめて大丈夫ですよ。もう嘘つかなくていいんだよ。」
「・・・・・・・・・・。」
「私達が手にしているのは、
防犯カメラの映像だけです。
だから君が“ムコウジマに居た”という証明は出来るけど、
“犯行の証拠”を掴んだわけじゃない。」
「・・・・・・・。」
「それから肝心の犯行現場は、
当日の土砂降りのおかげで、
[君を示す痕跡]は残っていません。
でも現場に残っていなくても、
君がその日着ていた服、
持っていた鞄や持ち物。
そこに[現場を示す痕跡]が残ってるかもしれない。」
「・・・・・・・・。」
「その気になれば多少の力技だけど、
強引に君が住んでるアパートへ、捜索差押え許可状を持ってガサ入れする事も出来る。
君をムコウジマの取調室へ拉致監禁して、
超圧迫取り調べを受けさせる事も出来る。」
「・・・・・・・・。」
「でも出来れば手荒な真似はしたくありません。出来れば“自首”を薦めたい。
出来れば・・・君の口から、
トモコさんの天晴れな最期を聞きたい。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」