母を想えば


倒れたまま起き上がれない、
私の肩を持つその手・・

つい昨日のように・・
ついこの前のように・・


眠たいくせに、目をこすってハヤトの帰りを待っていた小さな手が・・

美味しそうにスイカを食べていたその小さな手が・・

練習中にしょっちゅう突き指して包帯を巻いていたその手が・・


20年ぶりに間近で見るその瞳が・・


「アハハ・・大きくなったね・・。」


「お母さん一緒に逃げよ・・!
今度は私がお母さんを守るから・・

・・・スッ・・一緒に逃げて・・
・・スッ・・ヒック・・・・・・
一緒に暮らそうよお母さん!!」


「・・・・・・・・・・。」


「私・・美容師になったんだよ・・?

夢だった美容師になって・・お金も稼げるようになったんだよ・・?

だから次は自分の為にお金使ってよ・・

もう・・あんな・・あんな質素な所に住まないでよ・・!」


「頑張ったね・・凄いねハルカ・・。

会いたい気持ちが抑えられなくなるから、
ずっと見ないようにしてたけど・・

でもちゃんと・・
HOT PEPPER見てたよ・・

いつも・・笑顔の写真を見て・・
お母さんも頑張れた・・・。」


「明日から・・私がお母さんの専属スタイリストになるから・・!

私がもっともっと綺麗にするから!!」


「・・・・・・・・・・・・・・。」



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