母を想えば
心臓の鼓動が1拍鳴る度、
その心音が弱まっていくのを実感する。
何もしなくても、
もうすぐ音は止まるんだと実感する。
だから力尽きる前に・・
最期の細工を・・。
私と杉内が相討ちになったと・・
“この場にもう1人誰かいた”
なんて悟られないように・・
「愛してるからね・・ハルカ・・。」
言葉を掛けるとまた動けなくなるだろうから、
その後ろ姿が雨音と暗闇に消えるまで見届けた後、聞こえないように小さく呟く。
「・・・・・・・・・・・・・。」
包丁を握る右手に全ての力を振り絞る。
最後の力を振り絞って、
自分のお腹へ突き刺す。
“ハルカね~、
おっきくなったら、
おかあたんのかみきって、
かわいくしてあげる!”
“お爺ちゃんとお婆ちゃんになっても、
俺はトモコと手を繋いでお花見したいと思ってるから”
最期の一拍が左胸を脈打った瞬間、
何物にも代えがたい、
私にとって全ての・・
2つの愛がこの頭にハッキリと浮か・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・
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