母を想えば
「父さん、開けるよ。」
「・・・・・・・・・・・。」
「遅くなってごめん。
ただいま戻りました。」
「・・やっぱり制服もスーツも、
ヨシヒトには似合ってないな。」
どうやら僕はまだまだらしい・・。
襖を開けた先、布団に横になっていた父が起き上がろうとするので、
枕元に座ってその体を支える。
「また入院したんだってね・・。
兄ちゃんから聞きました。」
「この歳になれば、
どこもかしこもガタがくる。
あとはアキヒトが嫁を貰って男の孫が出来れば、もうこの世に未練はない。」
「最近婚活始めたらしいから、きっと兄ちゃんならすぐ良い人と巡り会えますよ。」
「・・・ヨシヒトは最近どうなんだ?」
「え・・僕は仕事で、
それどころじゃ無・・・。」
「馬鹿者。お前の色恋沙汰なんて聞いとらん。仕事の方は最近どうなんだ?」
「あ、まぁ・・・
何とかかんとかやってるかな。」
「それなら良い。
スーツは似合ってないが、
顔はそれなりにマシになってきたな。」
起き上がった父が着替えを始めたので、
僕は一足先に本堂へと向かった。