母を想えば
「単刀直入に申し上げると、
才谷ヒロシが死にました。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
豊川さんの切り出しに表情をあまり変えない・・
ただ・・その優しい眼差しがだんだんと険しくなっていく・・。
「あまり驚かれないんですね。」
「いつですか?」
「昨日の夜です。」
「・・・そうですか・・。
どうして死んだんですか?」
「刃物でグサリと刺されました。凶器については鑑識班が詳しく調べています。」
「・・・・・・・・・・・。」
少し間が空いたので、
豊川さんから“交代”と視線を向けられる。
今度は僕から・・
「吉田さん。それでまずは・・
事実確認したい事があります。」
「なんでしょうか?」
「最近、才谷から手紙が送られてきましたか?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「確かに・・封筒が送られてきました。
ですが、中身は開けていません。」
「開けてない・・?」
「差出人の名前を見て、
封を開けることなく、
そのままシュレッダーしました。」
「では、手紙の中身は見ていないという事ですか・・。」
「内容は絶対に言わないでください。
例え深い謝罪が書かれていようが、
あの男を許すつもりも、
受け入れるつもりもありませんから。」