母を想えば


驚いてはいなかったものの、それは才谷自身にまるっきり興味が無いだけで、

僕には自然な様子に見えたけど・・


「“いつですか?”
と聞いてきましたね。」


「はい・・・。」


「“死因は?”
と聞いてきましたね。」


「はい。」


「私が“刺殺”と答えた後、
彼はどうしましたか?」


「・・・・・?え・・吉田さんからの質問は以上だったはずです。

その後、僕が手紙の件を切り出したので。」


「そこです。」


「・・・・・??」


「うまく立ち回ったつもりかもしれませんが、吉田さんはもう一歩踏み込むべきでしたね。

“才谷が何者かに刃物で刺されて殺された”

これを知った彼が、
どうして私に聞いてこなかったのか。」


「一体何をですか・・?」



「【いつの間に出所していたんだ?】です。」


「!?」


「才谷は“無期懲役”の受刑者です。

もし手紙も読まず、
遺族会の交流も断っているのなら、

吉田さんの認識は【才谷は刑務所にいる】になっているはずです。

そんな才谷が“死んだ”と聞かされたら普通、

“刑務所の中で病死した”か、“自殺”したケースを思い浮かべるのではないでしょうか。」

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