母を想えば


「来週の15日、久しぶりに集まろうと計画してたらしい。」


「・・・?遺族会がですか?」


「ありゃ・・?
吉田さんから聞いてないのか?」


「はい・・。“もう今となっては遺族会の交流は無い”と・・。」


「まぁ今回の事件とは関係無い事だったからわざわざ言わなかったのかもな・・。

来週の15日で、
ちょうど10年を迎えるんだ。」


「10年・・?お嬢さん達の事件があったのは20・・」



「灰原の死刑が執行された日だよ。」


「・・・・そうでしたか・・。」


「なんでアメリカみたいに、
日本には“終身刑”が無いんだろうな。

無期懲役なんてあやふやな罰を与えるからこんな事になっちまったんだ。」


「・・・・・・・・。」


「いやそれ以前に、
才谷にも極刑を与えるべきだった。

あいつも10年前に・・
灰原と同じように絞首してれば、

今回犯さなくてもいい罪を犯さずに済んだってのによぉ・・。」


「そうですね・・・。」


「テツさんから俺の黒歴史も聞いたか?」


「はい。遺体を見るたび嘔吐していた新米の関本君って・・。」


「2人目からは嘔吐なんて引っ込んで、
涙が止まらなかった。

何の罪も無い未来ある子たちが・・

部活を頑張ってただけなのに、
塾で受験勉強頑張ってただけなのに、

家計を助ける為にバイトしてただけなのに・・。」


「・・・・・・・・・。」


「よく、“親より長生きする事が最大の親孝行”って言うだろ?

安置所で彼女達の遺体と対面した遺族の人達を見て・・

あの泣き叫び声を聞いた時、
まさにその通りだなって実感したよ。」


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