母を想えば
――――――
“ガラガラ”
「いらっしゃいま・・あ、星野さん!
・・という事は事件ですね!?」
「おはようカエデちゃん。
ごめんね・・
また今度ちゃんと食べに来るから。」
良い言い方をすれば“老舗”、
悪い言い方をすれば“オンボロ”。
朝から営業する街の定食屋さんとして、
常連客も多い“元気飯”の扉を開けると、
いつものようにバイトのカエデちゃんが、
朝から鋭い察しと共に迎えてくれた。
「豊川さん。おはようございます。」
「・・・おはようございます・・・。」
そのままお店の一番奥のカウンター席、
左から2番目の“定位置”まで向かう。
「昨日からご実家に帰られたんじゃないんですか?」
「母の法要を終えて、
昨日のうちにすぐ帰ってきました。」
「君も忙しい人ですね。
お母様はお元気でしたか?」
「父にも兄にも言われましたが、
案の定・・母にも。
『相変わらずスーツ似合ってないね!』って笑われました。」
「今度時間が出来たら、私も一度ご挨拶に行ってもいいですか?」
「ありがとうございます。
母も喜んでくれると思います。」