母を想えば
それまでの和やかな雰囲気が一変した。
鏡に映り・・僕の髪を器用に捌いていく満島さんの表情が・・
その目が、“怒り”の感情を発する・・。
「あの女は・・お父さんを【自殺】に追い込んだ挙げ句・・そのまま逃げたの・・。」
「・・・・・・。」
「これがこの店に・・吉田さんのお家に居候させてもらう事になった理由かなっ。」
怒りの感情を発しながら、手に持ったハサミは繊細に僕の髪を剥いていく。
ある意味、笑いながら怒る豊川さんと似てるかも・・。
「お母様は・・・。」
「あんなクズに“様”なんて付けないでよ。
“さん”も要らない。」
「あ・・じゃあお父様を自殺に追い込んだって・・お母は何をしでかしたんですか?」
「不倫。」
「え!?」
「・・・なんでそんな驚くのよ。」
「あ・・少し前に不倫が絡んだ事件を担当してたので、つい敏感になってしまいました。」
「・・後から知った事だったけどね。
最初はワケが分からなかった。
ワケが分からずにずっとお父さんが死んじゃった哀しみに押し潰されて・・
人ってこんなにも目が腫れるんだってぐらい、ずっと泣いてた。」
「・・・・・・・・・。」