母を想えば
「「「「「・・・。」」」」」
「・・・・・・・・・・。」
被疑者検挙率100%
罪を犯した人間を必ず捕まえる。
今回もそれが達成されようと・・
本来なら安堵と達成感で柔らかくなるはずの空気が、重苦しくなっていく。
「張り込み班からの報告では、
毎日のように営業が終わると知り合いや同業者の所を訪れてる。」
「・・。」
「こんな事考えたくないけど・・
もしかしたら金を無心してるかも・・
“逃亡資金”を用意してる可能性だって0じゃない・・。」
「・・。」
「テツさん。もうこれ以上は待てません。
・・・もうこれ以上・・
“待つ”理由は無い・・。」
「むしろ、今日までよく辛抱してくれましたね。関本主任には感謝しかありません。」
「・・・・・・・・・・・・。」
沈痛な表情を浮かべる関本主任が、
ついに決断をした。
ここ数日、
頻繁に出入りを繰り返す被疑者の姿。
一歩間違えれば、
尾行が撒かれていたかもしれない。
一日経過する度、
張り込み班の疲労は蓄積されていく。
そんな危険な状態が続く中、
最悪の事態になる前に、本当ならもっと早く逮捕に着手するべき・・
動こうと思ったら動けたはずだった。
「・・・・・・・・・・・・・。」
「・・。」
それでも我慢し続けたリーダーの肩へと、豊川さんが労うようにポンッと手を置き・・
「悪かったな関本。」
「・・・先輩・・・
後はお願いします・・。」
美容サロン“MAHO”へ、
豊川さんと僕が向かう事になった。