母を想えば


最新の・・辛辣な内容の口コミが表示されたスマホを豊川さんに渡すと、

何かに安堵したかのように・・
少しだけその口元が微笑んだ。


「これってどういう・・?」


「私の予想ですが、こうしてお一人の方が憤りを我慢できずに書き込んでいますが、

この方のように予約をキャンセルされた人は大勢いるはずです。」


「・・・・・・・・・・・。」


「良かったですね。代わりに髪を結ってくれるお店が見つかって。」


「・・・もしかして・・・?」


「見つかったのか。それとも知らずのうちに見つけてもらっていたのか。

オーナーさんに直接聞いてみましょう。」





午前11時。
美容院が一番混むお昼の時間帯。

たどり着いた美容サロン“MAHO”



“カラン カラン”


扉を開けて店内に入ると、
そこには客もスタッフも誰も居なかった。


「・・・・・・・・・・・。」


ただ一人・・オーナーの吉田さんだけが受付で事務作業をしていた。



「吉田さん、おはようございます。」


「おはようございます・・。」


「今日は定休日ですか?」


「・・・・・・・・・・・・・。」


「それとも、臨時休業ですか?」


「・・・・・・。」



豊川さんの問いかけに、その表情は穏やかに・・覚悟を決めた顔へと変わっていく。


「どうぞ。お座り下さい。」


先日と同じように、
待合のソファへと案内された。


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