母を想えば


「・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・。」


・・・・・いない・・・・。
もう成仏してしまったのかな・・。


向こうも現わしやすいようにと、なるべく人目も避けられる夜を待ったけど・・

逆に遅かったのかもしれな・・


『すみません。』


「・・・・・?」



犯行現場となった一本道の路地。

誰ともすれ違わなかったはずだけど・・
背中側から声を掛けられた。


「はい。」


『誰かお探しですか?』


振り返った先、
声の主は40代ぐらいの・・

豊川さんよりは歳下と思われる、
坊主頭の年配の男性が立っ・・・


・・・いや・・・・


「あなたは死者ですか?」


確実に僕のこの力は増しているのかもしれない。


“元気飯”の漁師さん。

刑事になって初めて向き合った被害者、門田マリさん。


今までは見た目だけで区別がつかなかった生者と死者の境。

だけどここ最近はその雰囲気だけで・・

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