母を想えば


『ンンッ、驚かせてすみません。
やはり雰囲気で分かるんですね。』


「あなたは・・?」


『ンンッ、通りすがりの浮遊霊です。

“死者が視える刑事”・・興味が沸いたので話し掛けさせて頂きました。』


「・・・??
僕の事を知ってるんですか?」


『ンンッ、もう1週間経ちますか?

あなた方警察がこの路地裏を占拠していたのを遠くから見てました。』


「あ・・じゃあひょっとして、
事件も目撃・・?」


『ンンッ、被害者の男性から事情をお聞きになられていたので、

私が出る幕じゃない判断し、
自重しておりました。

犯人は無事に捕まったんですか?』


「はい。あの・・声が出にくいんですか?」


『いえ、生きてた時の癖です。
というより死ぬ間際の名残です。

死んだら“呼吸”なんて無いんですけどね。

当たり前ですが、
最期は息苦しく死んだので、

ついついこうして・・ンンッ、
喉を楽にしたくなります。』



「失礼ですが、ここ数日もこの界隈を浮遊していましたか?」


『普段は日本全国自由気ままに浮遊していますが、最近はずっとセイズにいました。』


「あ、じゃあ先週ここで起きた事件の被害者の方を視ませんでしたか?」


『ンンッ・・いえ、視ていませんね。』


「そうですか・・。」


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