穢れ払い
俺は野次馬たちに返事をせず、そっとロッカーに手を伸ばした。


嫌な予感を抱えたままロッカーを開けた瞬間、赤いかたまりが落下してきた。


近くにいた生徒たちが悲鳴を上げて後ずさる。


俺も咄嗟に後方に飛びのいていた。


落ちてきたそれをよくよく見てみると、長いシッポとヒゲが生えているのがわかった。


大きなネズミの死骸だ。


ネズミは腹部を真っすぐ縦に切られ、中から臓器が飛び出し、ロッカーの中は血にまみれている状態なのだ。


その上、切り裂かれた腹部にはバドミントンの羽根がねじ込まれている。


俺は思わず口をふさぎ、こき上げてくる吐き気を抑えた。


誰がこんなことを……!


「女子のお腹にボールを当てるからだ」


どこからかそんな声が聞こえてきて振り返る。


しかし、そこに見えるのは好奇心から俺を取り巻いている野次馬たちだけだった……。
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