穢れ払い
「ごめんね泣いちゃって。泣いててもなんにも解決しないのにね」


そう言って笑った時だった。


雄大と視線がぶつかった。


さっきまでなにも見ていなかった雄大が、たしかにあたしを視界に入れたのだ。


あたしは驚いて雄大を見つめ返す。


雄大は小首をかしげ、少しだけ眉を寄せた。


それはどこか辛そうな顔に見えて、あたしは慌てて自分の涙をぬぐった。


雄大はあたしの泣き顔を見て悲しそうな顔をしたのだ。


「ごめんね雄大。あたしは大丈夫だからね」


そう言ってほほ笑んで見せると、雄大は微かに口角を上げてほほ笑み返したのだった。
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