穢れ払い
「ナオヤ君に……? いいけど、でも……」


ユマちゃんのお母さんは言いにくそうに口を閉じた。


自分の娘が裏切った男の子に連絡を入れるのだから、躊躇しても仕方なかった。


「ユマちゃんはナオヤの名前を呼んでいました。ナオヤが来てくれれば、なにか変化があるかもしれないです」


「そう……。でも、ナオヤ君が嫌なら無理強いはしないでね?」


「もちろん、わかっています」


あたしはうなずき、ナオヤへ連絡を入れた。


『陽菜? 電話してくるなんて珍しいな』


電話に出たナオヤは開口一番そう言った。


クラスメート全員の番号は把握しているけれど、ナオヤにかけたのはこれが初めてだった。


「ナオヤ、あたし今ユマの家にいるの」


そう言うと、しばらくの沈黙が流れた。


『そっか』


そっけない返事。


しかし、ユマのことを気にかけているのか電話を切ろうとはしなかった。
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