183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
千円札を一枚渡して言う。

「俺はいらない。お前の分だけ買ってこい」

「飲まないのに、お金くれるんだ」

「お前は貧乏だからな。給与を漫画本につぎ込んでいるせいで」

「否定はしないよ。ありがとう」

真衣は自動販売機へ。柊哉は先に、果樹の花の方へ向かった。

近づけば、それがりんごの木であることがわかる。

微かに甘酸っぱいりんごの香りがする。なにより幹に品種を書いたプレートがつけられているので、間違いない。

舗装された駐車場は一段低く、縁がコンクリートで固められているので、ベンチ代わりにできそうだ。

さっと砂を払って腰を下ろしたら、飲み物を手に真衣もやってきた。

その手にあるのは茶色い小瓶のエナジードリンクで、突っ込まずにはいられない。

「じじくさい選択だな」

「子供の頃から好きなの。じじくさいのは、そうかもね。おじいちゃんの家に常備されていたのを、遊びにいくたび飲んでたから」

「なるほどな」

隣にハンカチを広げて置いてやると、真衣は笑ってお礼を言った。

「ありがとう。今日は紳士だね。どうしちゃったの?」

「馬鹿やろう。俺はいつもこうだ」

「嘘ばっかり」

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