183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
そのような気持ちになったのは、真衣への興味が深まったからなのかもしれない。

彼女がなにに喜び、なにが苦手で、どんな場面でどういう反応をするのか、探ってみたくなる。

「漫画とエナジードリンク以外で、好きなものは?」

「唐突だね。どうしたの?」

「聞いてみたくなっただけだ。苦手なものは?」

妻をもっと知りたいという、柊哉の純粋な探求心に、真衣は嫌そうに眉を寄せた。

「帰ったら玄関にゴキブリの玩具が置いてあるとか、バスルームにゴム製の蛇が吊るしてあるとか、やめてよ」

「俺はガキか。するわけないだろ。例えば、こういうのが苦手かどうかが知りたい」

「こういうのって?」

首を傾げる真衣を、ニヤリと口の端を上げて見た柊哉は、彼女の太腿を枕に、仰向けに寝そべった。

「わっ……!」

真衣は驚きに声をあげたが、ドリンクの小瓶を手にしているため、咄嗟に防ぐことができなかったようである。

「急になにするのよ」

「気持ちいいな……。こういう触れ合い、お前は嫌か? 嫌ならすぐにやめる」

女性らしい丸みのあるフェイスラインと、パッチリとした勝気な目を見上げ、柊哉は真顔で問いかけた。

真衣は珍しくなんと答えたらいいのかと、戸惑っている様子。

視線を泳がせてから、口を尖らせ、恥ずかしそうに答える。

「別に、嫌じゃないけど……」

「そうか。なら、少しこのままでいさせてくれ」

目を閉じれば、緑と土の匂いを含んだ風を感じた。

朝の日差しは柔らかく、暑くはない。

気の抜けたような長い息を吐き、口元をほころばせた。

柊哉は今、穏やかな幸せに浸っている。

「甘えちゃって……」

独り言のような文句が聞こえた後には、頭を優しく撫でられた。


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