183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
市場調査と他社製品の分析と研究まで戻ってやり直せということを、丁寧な口調と紳士的な態度で命じ、会議を終わらせたのだ。

否定的な意見を述べる柊哉が、終始、好青年風の笑みを浮かべていたことを思い出し、それがまた真衣の怒りに油を注ぐ。

(プラン案を白紙に戻されたというのに、うちの先輩女性社員の目がハートになっていた。女を騙すのはやめてよね。まぁ、生い立ちを聞けば、いい子を演じるようになったのは仕方ないとも思うけど……)

柊哉の二面性の根本は、愛人の子という出自にあるように思う。

新しい家族に見捨てられないように、迷惑をかけないように、できれば受け入れてよかったと思ってほしい……そのような思いが、柊哉に仮面を被らせたのだ。

それを思うと、怒りの目盛りは少し下がるが、唇を噛むのはやめられない。

企画部まであと少しという廊下の途中で、向かいからきた和美と鉢合わせる。

その手には、書類の入ったクリアファイルが持たれていた。

「和美、どこか行くの? 今日は一緒にお昼に入れない?」

「総務にこれを出しにいくだけだから大丈夫。少し待っていて」

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