183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
そう言ったのに、ふたりは足を止めて立ち話を始めてしまう。

「真衣、眉間に縦線入ってるよ。企画、通らなかったんだね」

「そう。調査研究からやり直せってひどいと思わない? 充分にやった結果のプランなのに。他社製品と似てしまうのは仕方ないでしょ。他社だって採算が取れるギリギリのラインで計算しているんだろうから。学資保険は加入者数が限られて儲からないとわかっているなら、撤退する決断すればいいのに」

「真衣、シッ。声落として。廊下で重役の悪口言ってると思われるよ」

昼休みに入ったばかりなので、廊下にはランチに向かう社員が十数人いる。

和美は辺りに視線を配り、誰もこちらに注目していないとわかると、ホッと息をついた。

「ごめん。もう言わない」と口を閉ざした真衣に、和美が首を傾げる。

「なんでそんなにイラついてるの? 企画部の宿命ともいえる、いつものことなのに」

「そう、だよね……」

和美の言う通り、何カ月もかけた企画を、重役に簡単に却下されるのは、企画部にとって当たり前である。

通ることの方が少ないのだ。

努力を踏みにじられたと、いちいち怒っていては心が持たない。

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