183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
「日葉を背負って立つ副社長とは思えない発言だね……」

そうは言いつつも、真衣は笑顔で頷いた。

ここでひたすら作り笑いを浮かべているより、ずっと楽しそうだと思うからだ。

ホールを出たふたりは、エレベーターで最上階へ。

バーラウンジも客室のドアが並んだ廊下も無人で、照明は落とされており、いけないことをしているような心持ちで真衣の胸は高鳴る。

眺望を楽しんでから、階段を使ってフロアを覗いては下りるを繰り返し、三階に辿り着いた。

その階に客室はなく、美容室、更衣室、控室、中小ホールが四つとチャペルがあった。

「真衣、チャペルを覗いてみよう」

「入って大丈夫?」

「駄目だけど、大丈夫なんじゃないか」

声をひそめて笑い合ったふたりは、四メートルほども高さのある白い両開きの扉を開けた。

「わっ、素敵……」

思わず真衣の口から感嘆の息が漏れる。

奥行きのあるこのチャペルは、ほぼ百パーセント婚礼に使うのだろう。

中央にはあらかじめ、赤絨毯が敷かれている。

バージンロードの先に説教台があり、その後ろの壁には十字架と二枚のステンドグラス窓があった。

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