183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
(偽物のプロポーズは寂しい。柊哉はきっと、私が喜ぶと思って漫画の真似をするんだろう。仕方ない。意地悪じゃないようだから、付き合ってあげるか……)

彼の胸を押して距離を開け、すっかり見慣れた端整な顔を見上げる。

面白がってはいないようだ。

真衣と同じように切なげな顔に見えるのは、漫画の通りに演じようとしているからなのか。

「子供の頃から一緒にいる私を、女として見れないと言ってたよね。結婚したいって、本当に……?」

「悔しかったんだ。ヒナノに男として見られていないと思っていたから、それなら俺も……そんな気持ちで嘘ついた。後悔してる。けど信じてほしい。俺は中学の時からお前に惚れてる。今さら結婚したいと言っても遅いのか……?」

「遅くないよ。私、課長のプロポーズ断ったの。タケルを忘れられそうにないから。私もずっと好きだった。この先もタケルと一緒にいたい」

「ヒナノ」「タケル」と漫画の登場人物の名を真顔で呼び合い、同時に吹き出した。

真衣の切なさは半減し、こういうのも悪くないと思い直す。

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