183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
シンデレラなどの童話に出てくる義理の家族のように、自分も意地悪されるのではないかと身構えていたところ、母も姉も親切で、柊哉は最初はホッとした。

けれどもなにかが違うと、すぐに気づいた。

笑顔なのに、目が笑っていない……そう感じたのだ。

母と姉は、本当は柊哉を疎ましく思っているのに、それを笑顔で隠し、家族が壊れないようにと努力していたのが、幼い柊哉にも伝わっていた。

亭主関白なところのある父に、母が文句を言っているところは見たことがない。

父の手前、柊哉を跡取りとして立ててくれる。

姉も、柊哉に遠慮しているようなところがあった。

長期休暇の行楽地選びや、ケーキの箱を開けて食べたいものを選ぶ時、柊哉の意見を優先してくれる……それに柊哉は苦痛を覚えた。

母と姉には感謝しているが、その一方で、我慢させていることの申し訳なさや居心地の悪さを常に感じ、柊哉もまた自分を偽る癖がついたのだ。

仲のいい一部の友人の前では馬鹿を言い、子供らしく無邪気でいられたけれど、家族の前ではただでさえ邪魔者なのだからと、いい子でいることを自分に義務付けてきた。

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