183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
真衣は自分で結論を出し、急いで副社長室を出ていった。

静けさが戻った部屋の中、柊哉はひとり笑いをする。

(腹を立てたなら、普通はプレゼントを買わないと言うよな。あの怒り方は照れ隠しか。可愛い奴め。なんでもいいじゃなく、真衣が欲しいと言えばよかったな。盛大に恥ずかしがる顔が拝めたかもしれない。さすがにそれは、俺も照れるが……)

啓介が用意した弁当は、重箱風のプラスチック容器に和御前とシールが貼られていた。

開けると、総菜が六品と山菜おこわが入っており、肉じゃがもあった。

肉じゃがから口に入れ、低く唸る。

(この弁当、名のある仕出し屋のものだが、真衣が作ったものの方が好きだ……)

真衣がいる温かな食卓を頭に浮かべ、早く帰りたいと思う柊哉であった。


それから九日が経った木曜日。

会議用の椅子に腰かけている柊哉は、神妙な面持ちだ。

八時という早い時間に会長以下、十四人の取締役が緊急招集され、ドーナツ形のテーブルを囲んでいる。

なにが起きたのかというと、昨夜、小峰社長が自宅にて心筋梗塞で倒れたのだ。

< 142 / 233 >

この作品をシェア

pagetop