183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
たまに『勉強はどうだ?』と問われ、『学年考査は一位、塾のオープン模試は全国十二位でした』と淡々と答える。

それはまるで、定期的な業務報告のようであった。

満足げに父が頷き、今日のように肩や頭をポンと叩かれると、喜ぶのではなくホッとしたのを思い出す。

父の望むように育っていれば、捨てられないだろう……そのような安堵だ。

大人になればもう、家なき子になる不安は解消されたが、父にどう評価されているのかを気にする癖は抜けない。

(社長業務をこなせる実力があるとは、思われているのだろう。意のままに動かせる駒だとも思われていそうだな。肉親の情は相変わらず薄い。あの人は、人を愛したことがあるんだろうか? 亡くなった母さんも、今のお袋も、女は泣かされて気の毒だ……)

仕事面では父を尊敬し、その背中を追わねばならないと思っている柊哉だが、プライベートで見習うべき点は見つからない。

(俺は、父さんのようにはならない……)

戒めのような、誓いのような言葉を心に呟けば、なぜか真衣の顔が浮かんだ。

チャペルで指輪をはめてやった時の、嬉しそうな笑顔だ。

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