183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
すると、不幸な生い立ちという名の鎖が緩んだかのように、心が少し楽になる。
(お前は社長夫人になるんだぞ、と言ったら、真衣はどんな反応をするだろう。帰ってからが楽しみだな……)
他の重役たちが次々と席を立って会議室を出ていく中、柊哉に声をかけてきたのは、真っ先に賛成を表明してくれた斎藤常務だ。
「おめでとうございます」
意味ありげな顔でそう言った彼に、柊哉は苦笑して答える。
「まだ早いですよ。それに今は、小峰社長の回復を願うのが先ですので、お祝いの言葉はもう少し後にいただきます」
「そつのない返事ですな。若者らしく本音で話してくださいよ。私は副社長の味方ですから」
「ありがとうございます。斎藤常務、ここを出てから話しましょう」
柊哉が気にしたのは、義兄の白川専務だ。
彼はひとりだけ立とうとせず、机上を見つめて眉を寄せていた。
若い柊哉が社長に就任すれば、その椅子が自分に回ってくることはないと悟り、おそらく悔しさの中にいるのだろう。
気の毒に思うが、申し訳ないとは思いたくない。
(俺だって、ここで生き抜くのに必死なんだ……)
(お前は社長夫人になるんだぞ、と言ったら、真衣はどんな反応をするだろう。帰ってからが楽しみだな……)
他の重役たちが次々と席を立って会議室を出ていく中、柊哉に声をかけてきたのは、真っ先に賛成を表明してくれた斎藤常務だ。
「おめでとうございます」
意味ありげな顔でそう言った彼に、柊哉は苦笑して答える。
「まだ早いですよ。それに今は、小峰社長の回復を願うのが先ですので、お祝いの言葉はもう少し後にいただきます」
「そつのない返事ですな。若者らしく本音で話してくださいよ。私は副社長の味方ですから」
「ありがとうございます。斎藤常務、ここを出てから話しましょう」
柊哉が気にしたのは、義兄の白川専務だ。
彼はひとりだけ立とうとせず、机上を見つめて眉を寄せていた。
若い柊哉が社長に就任すれば、その椅子が自分に回ってくることはないと悟り、おそらく悔しさの中にいるのだろう。
気の毒に思うが、申し訳ないとは思いたくない。
(俺だって、ここで生き抜くのに必死なんだ……)