183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
すると【ハンドバッグはあるからいらない】と、なんとも欲のない返事が。

それならばと、ショーウィンドウ全体を写真に撮り、【服、帽子、靴、欲しいものを言え】と送信したが、【どれもいらない】という冷めた言葉と共に、うさぎのキャラクターが迷惑そうな顔をしているスタンプが送られてきた。

ムッとした柊哉がスマホをポケットにしまったら、また真衣からメッセージが。

【今日、KGコミック発売日なんだよね。『学園王子の沢渡くんは私にゾッコン~制服を脱がさないで~』の十二巻を買ってきて】

それに対し柊哉は、俺にそんな恥ずかしいタイトルの漫画本を買わせるなという思いを込めて、熊のキャラクターのこめかみに青筋が立っているスタンプを返したのだ。

あの時は腹立たしく思ったが、こうして読み返してみると、馬鹿馬鹿しいやり取りがおかしくて、肩を揺らす。

笑ったことでプレッシャーや疲労が和らぎ、休憩を取ったような心持ちになれた。

真衣に【二十一時半】と帰宅予定時刻を送信し、柊哉はスマホを置いた。

意識をパソコン画面に戻す前に、今度は紙書類を手に取る。

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