183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
今思えば、であるが。

味気ない態度の裏には、なにか思うところがあったのではないかと気になった。

柊哉には言えない気持ちを、啓介に聞いてもらおうと思い立ち、真衣はここへ来たのではないだろうか。

そのような推理を組み立てた柊哉は、顔を曇らせて真衣を見つめる。

(言いたいことがあるなら、俺に直接言えよ。それが真衣だろ……)

真衣はなかなかドアをノックしない。

可愛らしい顔の眉間に皺を寄せ、それが徐々に深くなる。

(なにを聞いている? 腹を立てているような顔をしているが……)

そう思ったら、真衣がキッと瞳を険しくし、ノックもせずにドアを開けて中へ入っていくのが見えた。

柊哉は速やかに秘書課前に移動し、開けっ放しのドア横に潜む。

「真衣さん?」

まずは啓介の驚きの声がした。

気づかれないよう注意して中を覗けば、啓介と真衣、それと……響子の姿があった。

他の秘書は退社したのか、それともそれぞれの担当する重役の執務室にいるのか、不在である。

啓介と響子は入口近くで立ち話をしていたようで、そこに怒り顔の真衣が割って入ったような状況だ。

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