183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
柊哉は胸打たれていた。

真衣がそこまで自分を理解してくれていたとは、嬉しい驚きである。

居場所を失いたくない、認めてもらいたいという悲しい必死さ……それを指摘され、納得させられてもいた。

(言われてみれば、そうだな。子供の頃に毎日感じていたことは、大人になってあの家を出たからといって、消えたわけじゃないんだ。だからこそ、まだ若いと反対する者がいても、俺は今すぐ社長の椅子が欲しいのか。俺自身より、真衣の方が俺をわかっているな……)

胸を揺さぶられたのは柊哉だけではなく、響子もであるようだ。

けれどもそれは柊哉とは違い、押し込めていた負の感情を解き放つ鍵となったようで、響子の口元から作り笑いがスッと消えた。

雰囲気があからさまに冷たくなる。

「あなたに、なにがわかるというのよ……」

低い声でそう言うと、上品さを捨てて真衣を憎らしげに睨みつけた。

「私の方があの子の何倍も努力してきたわよ。弟だと連れてこられた日からずっと!」

苦しかった子供の頃の胸の内を、響子は怒鳴るように真衣にぶつける。

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