183日のお見合い結婚～御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない～

「ぶん殴るぞ。俺は忙しい。他の秘書も間もなく戻ってくる。ふたりとも、今すぐ出ていけ」

啓介に廊下まで押し出され、背後で手荒にドアが閉められた。

「ふたりとも、だって。柊哉のせいで私まで叱られたじゃない」

頬を膨らませて文句を言った真衣だが、その頬は赤いままである。

柊哉は笑って受け流し、その後は周囲を気にして声をひそめて言う。

「スマホにも送ったが、今夜の帰宅は二十一時半頃になる。真衣を気遣おうにも、どうにも仕事が終わらない。できるだけ早く片付けるように努力はする」

「そういうの、いらないと言ってるのに」

「俺も寂しい。早く帰って真衣の手料理をゆっくり味わいたいと思っているんだ。スケジュールに関しては、できるだけ早く帰るようにする……そのくらいの緩さでいこう」

「う、うん……」

柊哉の口から寂しいという言葉が出たためか、真衣はますます顔を赤らめて、それを隠そうとするように背を向けた。

今日の彼女は髪を結い上げ、シンプルなバレッタで留めている。

ほっそりとした白い首と綺麗なうなじに、柊哉は目を奪われた。

それは欲情ではなく、不思議な既視感だ。