183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
「えりかちゃん……?」
あくびをしてソファに身を起こした彼は、真衣の不満顔を見上げておかしそうに笑った。
「俺、寝言でその名を呼んだのか?」
「そうだよ。『えりかちゃん、待って』と言ってた。前の彼女? それとも、今の……?」
不安に声を揺らせば、腕を引っ張られ、隣に座らされた。
彼はなぜか嬉しそうな顔をしており、至近距離から真衣の目の奥を覗き込んでくる。
「知らなかったな。俺は嫉妬されるほど愛されていたのか」
「からかわないで。私はただ、婚姻中は恋人を作らないという約束を破っているんじゃないかと思っただけだよ」
「へぇ、それだけね。まぁ、そういうことにしといてやるよ」
真衣の言い訳を信じていないような言い方をした彼は、えりかについて話し出す。
「浮気じゃないぞ。過去に付き合った女でもない。俺は懐かしい夢を見ていたんだな。えりかちゃんというのは――」
柊哉が九歳の小学三年生の時に、祭りで出会った女の子が、えりかであるそうだ。
実母を亡くし、芹沢家に迎えられて一年半ほどが過ぎた晩夏、柊哉は母と姉と三人で東京郊外のとある神社の例大祭へ出かけた。
あくびをしてソファに身を起こした彼は、真衣の不満顔を見上げておかしそうに笑った。
「俺、寝言でその名を呼んだのか?」
「そうだよ。『えりかちゃん、待って』と言ってた。前の彼女? それとも、今の……?」
不安に声を揺らせば、腕を引っ張られ、隣に座らされた。
彼はなぜか嬉しそうな顔をしており、至近距離から真衣の目の奥を覗き込んでくる。
「知らなかったな。俺は嫉妬されるほど愛されていたのか」
「からかわないで。私はただ、婚姻中は恋人を作らないという約束を破っているんじゃないかと思っただけだよ」
「へぇ、それだけね。まぁ、そういうことにしといてやるよ」
真衣の言い訳を信じていないような言い方をした彼は、えりかについて話し出す。
「浮気じゃないぞ。過去に付き合った女でもない。俺は懐かしい夢を見ていたんだな。えりかちゃんというのは――」
柊哉が九歳の小学三年生の時に、祭りで出会った女の子が、えりかであるそうだ。
実母を亡くし、芹沢家に迎えられて一年半ほどが過ぎた晩夏、柊哉は母と姉と三人で東京郊外のとある神社の例大祭へ出かけた。