183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
「俺、変なフェチズム持ってないから誤解すんな。うなじは思い出した切っ掛けにすぎない。勝気な目元や全体的な雰囲気が似ている。見知らぬ年上の少年相手に、ポンポンものを言うような子だった。な、似てるだろ?」

「その子、六、七歳でしょ? そんな小さな子と比較されてもね……」

新しい家族の中で自分の居場所作りをしていた頃の九歳の柊哉を、一時だけでも苦しみから解放し、笑顔にさせてくれた小さな女の子。

その子に似ていると言われても、喜んでいいのか悪いのかわからなかった。

「随分、はっきり覚えているんだね。もしかして柊哉の初恋?」

思い出に浸っているような顔の彼に、何気なく尋ねれば、フッと笑って返される。

「可愛いとは思ったが、あの場限りの出会いに恋もクソもない。ただ、今思えば、その後に俺がいいなと思った女の子は、みんなどこか、えりかちゃんに似ていた気もする。俺の好みの原点なのかもな」

しみじみとした口調で自己分析する柊哉は、なにも映っていないテレビ画面に視線を止めていた。

物思いにふける端整な横顔を見つめる真衣は、照れくささを感じている。

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