183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
(昔のうちの家族みたい。お母さんもああやって、私と妹に食べさせてくれたよね。二十年ほど前のことだから、はっきりとは覚えていないけど。それにしても、浮かんできたこの朧げな記憶は一体……)

「疲れたのか?」と、柊哉に顔を覗き込まれてハッとする。

「参道に座るのはどうかと思うが、少し休憩するか。あの辺、空いてるぞ」

「ううん、大丈夫。それより、聞いてほしいことがあるんだけど……」

縁日を回ってここへ着くまでの間に思い出したことを、真衣はとつとつと説明する。

多分、あれは小学校一年生の夏。

真衣は家族三人で、例年通り、この祭りに合わせて祖父の家に泊まりに来ていた。

子供神輿を担いで住宅街を練り歩き、その時は祖父も一緒だったが、疲れたと言って途中で帰ってしまった。

その後は母と幼い姉妹で、縁日を楽しんだ。

妹の亜由は、真衣と三つ違いのあどけない三歳児で、途中でトイレに行きたいと言い出した。

公園のトイレの他に仮設トイレもあったけれど、人気屋台並みに行列ができており、亜由は我慢できずに漏らしてしまった。

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